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ランボルギーニは2026年6月9日、1986年1月ブリュッセル・モーターショーでの「LM002」発表から40年を迎えたことを記念する情報を公開した。
【画像99枚】現代のスーパーSUVブームを作った? LM002をそのルーツから画像で確認
スーパーカーのDNAとオフロード性能の融合
LM002は、高性能オフローダーの概念を再定義し現在の「ウルス」ファミリーへと続く道を切り開いた歴史的モデル、として位置付けられている。サンタガタ・ボロネーゼが誇るスーパースポーツカーのDNAと、かつてないオフロード性能を融合させた大胆な車両であったと言えるだろう。
アウトモビリ・ランボルギーニ会長兼CEOであるステファン・ヴィンケルマン氏はLM002の意義について次のように述べている。
「LM002は、ランボルギーニの現代のビジョンのルーツの一つを表しています。時代をはるかに先取りし、スーパーSUVの概念を予見していました。それは私たちの製品哲学だけでなく、今日のウルス・ファミリー全体に見られるデザイン要素にもインスピレーションを与えています」
サンタガタ・ボロネーゼにあるランボルギーニ博物館では、6月9日より、初のスーパーSUV誕生40周年を記念する展示が開始されている。
開発の源流:プロトタイプ「チーター」の誕生
ランボルギーニの高性能オフロード車開発の起点は、1977年のジュネーブ・モーターショーで発表された全輪駆動のプロトタイプ「チーター」に遡る。米国モビリティ・テクノロジー・インターナショナル(MTI)社との共同開発によるこのプロジェクトは、米軍や中東市場の戦術的・軍事用モビリティの要件を満たす目的で構想された。
チーターはスチール製チューブラーフレーム・シャシーに、点検ハッチや露出した管状要素を備えるオープンアルミニウムボディと、オープンコックピットを組み合わせていた。パワートレインには、この種の四輪駆動車としては珍しい、リアミッドシップレイアウトを採用。
エンジンは、最高出力183ps/最大トルク362Nmを発揮する、クライスラー製5.9L V8。これに、やはりクライスラー製A727 3速オートマチック・トランスミッションとフルタイム四輪駆動の組み合わせ。サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーンで、フロントにはコイルスプリングとアンチロールバー、リアには調整可能なトーションバーを加えた構造となっていた。ブレーキには、当時のカウンタックと共通のベンチレーテッド・ディスクをフロントに使用。
以上のような構成により、チーターは乾燥重量約2042kgでありながら、60%から85%の勾配走破能力を持ち、最高速度はオンロードで167km/h、砂上では約140km/h、0〜100 km/h加速は9秒を記録した。生産はプロトタイプ1台にとどまったが、同社の高性能SUV開発における重要な技術的基盤となったと言ってよいだろう。
LM001からLMAへの進化と、実験的派生モデル
1981年のジュネーブ・モーターショーでは、続いて「LM001(ランボルギーニ・ミリターレ1)」が発表された。民間だけでなく軍事市場(特に中東)も視野に入れ、エンジニアのジュリオ・アルフィエーリの指揮のもと開発されたモデルである。
LM001では、装甲の追加を想定した、角張ったクローズド4ドアボディを採用。初期プロトタイプではAMC(アメリカン・モータース)由来の5.9L V8が試されたが、実際に搭載されたのは、カウンタックLP500 Sの4.8L V12エンジン(最高出力332ps)で、これは非常に革新的な点であった。むろんフルタイム四輪駆動、クライスラーA-727オートマチック・トランスミッションを備え、トルク配分はリア偏重となっていた。
車両寸法は全長4790mm、全幅2000mmで、中央部の最低地上高は425mmを確保。車両重量は約2100〜2400kgで、最高速度180km/h。0〜100km/h加速は約12秒という性能であった。
しかし、砂漠でのテストにおいて、急加速時や登坂時にリアエンジンの影響でフロントアクスルが極端に軽くなり、パワーステアリングの欠如も相まって、操縦安定性に悪影響が出ることが判明した。ウィッシュボーン、トーションバー、テレスコピックダンパーなどの高度な独立懸架を導入したものの、重量配分やエンジン冷却の課題からアーキテクチャの根本的な見直しが迫られた。
これを解決するため、エンジンをフロントに移した「LMA(ランボルギーニ・ミリターレ・アンテリオーレ)」を開発、よりバランスの取れた3ボックス・デザインのこのモデルは、1982年のジュネーブ・モーターショーで発表された。
このLMAでは、332psの4.8L V12を維持しつつ、トランスミッションはローレンジギアを備えた堅牢な5速ZFマニュアルに変更。フロントアクスルを切り離し、後輪駆動モードでも走行できる、選択式四輪駆動システムが採用された。ボディは全長約4.9m、重量約2600kgに達したが、サウジアラビアのテストでは最大120%の勾配を登り、190km/h近い速度を記録。これが、後のLM002の決定的な基盤となったのである。
なお、この期間には代替案として、ディーゼルの試作車「LM003」(1983年。VMモトーリ製150ps 5気筒ターボディーゼル搭載)や、船舶用エンジンを搭載した「LM004」(1985年。最高出力420ps以上/最大トルク589Nmの7L V12「L804」搭載)も作られたが、出力不足や重量・信頼性の懸念からいずれも量産には至っていない。
究極のオフローダー、LM002の完成
こうした経緯を経て、1986年から1992年にかけて生産された市販モデルが、LM002である。
エンジンはカウンタック・クワトロバルボーレ直系の5167cc 60度V12を搭載。約450ps(SAE NET規格で420ps)の出力を誇り、2700kgを超える車体を最高速度210km/hまで加速させた。初期はウェーバー・キャブレターを6基装着した仕様であったが、1989年以降は電子燃料噴射仕様へと進化した。
3つのセルフロッキングディファレンシャル(フロント25%、リア75%、センター75%・最大100%機械式ロック可能)を搭載、ローレンジギアと選択式四輪駆動を備えた5速ZFマニュアルギアボックスにより、最大120%の勾配に対応。
強化されたスチール製チューブラーフレーム・シャシーは重力加速度の最大8倍に耐え、圧縮時130mm、伸長時110mmのトラベルを持つ独立懸架システムを装備、水深82cmまでの渡河能力を有していた。
ピレリが専用開発した「スコーピオンBK」タイヤは、砂丘での浮上性と砂上での方向精度を高めるサイドウォールの「耳」を持ち、アラミド製耐カット素材やランフラット機能も備えていた。このトレッドパターンは世界ラリー選手権のタイヤから着想を得たものであったという。
ラグジュアリー装備と特別仕様車「LM/アメリカン」
LM002はオフロード車でありながら、内装には高級レザーやウッドトリム、エアコン、ブルーのティンテッドガラス、ルーフ一体型オーディオシステムが装備され、要望に応じてテレビの搭載も可能であった。キャビンは4座席で、広大なリアカーゴエリアも備えていた。1987年当時の価格は約1億6900万イタリアリラであった。
1992年の生産終了までに、米国向けモデルを含めて合計301台が製造されており、そのうちの1台である右ハンドル車は、現在ランボルギーニ博物館に展示されている。また、米国における厳しい排ガス規制(特にカリフォルニア州)に対応するため、60台限定で特別仕様「LM/アメリカン」も生産された。ちなみに1989年には、ラリードライバーのサンドロ・ムナーリが市販仕様の同車で約1万マイルを走る米国の耐久競技「ワン・ラップ・オブ・アメリカ」に参戦している。
燃料供給はキャブレターから、ボローニャのEFI社と共同開発した社内製マルチポイント電子燃料噴射システム「LIE 52/12」へと変更。触媒コンバーターの導入により全米の排ガス規制をクリアし、420ps(SAE NET)の出力を記録した。コンポーネントの配置や安全規制の関係上、燃料タンク容量は280Lから180Lへと縮小されていた。
現代への継承:ウルス、そしてヘリテージ保護活動
LM002の思想は、2012年の「ウルス」コンセプト発表により現代に蘇った。そして、2017年の市販版ウルス(最高速度305km/h)のデビューによって、スーパーSUVというセグメントにおけるランボルギーニの正当性を確固たるものにしたのである。
現在、LM002の歴史的価値は、同社のヘリテージ部門「ランボルギーニ・ポロ・ストリコ」によって保護されている。同部門はレストアや真正性証明、部品の供給を通じてオーナーを支援しており、ピレリとの協業により1980年代の専用タイヤ「スコーピオンBK」も再生産され、世界中で再び入手可能となっている。
【ル・ボラン編集部より】
V12を積む巨大なオフローダーというLM002の成り立ちは、発表当時こそ狂気の沙汰であった。砂漠を疾走するためにスーパーカーの心臓を移植する発想は、常識的な工学視点では極めて非合理的だ。しかし、その「過剰さ」こそがランボルギーニの神髄である。荒削りな操縦性やフロントエンジンの悪癖すらも、唯一無二のキャラクターとしてブランドの血肉となった。現代のウルスが洗練の極みに到達した今、粗削りな始祖の放つ熱量は一層際立つ。圧倒的な非日常性という哲学は、この異端児から脈々と受け継がれている。
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