究極の威厳を体現した最高級リムジン:メルセデス・ベンツ600/W100(1963〜1981)
メルセデス・ベンツの歴史において、1963年登場の大型高級リムジン「600/W100」は特別な輝きを放つ。戦前の「グロッサー・メルセデス」の伝統を受け継ぎ、最高級車の概念を根本から覆したこの一台は、初任給の50年分超えという桁違いの価格にもかかわらず、ローマ教皇や各国の王室など世界のVIPを虜にした。なぜ本作は「威厳の象徴」として伝説となったのか。妥協なきエンジニアリングと特注仕様の凄みに迫る。
【画像35枚】初任給50年分超えの特注空間。ローマ教皇も愛した「600/W100」の圧倒的な威厳と豪華装備を見る
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伝説の超高級車「グロッサー・メルセデス」の再来
メルセデス・ベンツ史上、最高級リムジンの原点といえるのが、1930年代初頭に登場した770/Kグロッサー・メルセデス。7.7Lの大排気量にコンプレッサーを組み合わせた超高級車で、王室や国家元首のための車両として世界にその名を轟かせた。

1935年型の昭和天皇御料車770/グロッサー・メルセデス。ボディカラーはロイヤル・マルーンの溜色(宮内庁色)でトップとフェンダーが黒色に塗装。
日本でも昭和天皇の御料車として知られ、ドイツのヒンデンブルク大統領、スウェーデン国王グスタフ5世、エジプトのファルーク王、ブルガリア国王ボリス3世など、錚々たる人物が愛用した。その伝統を戦後に復活させたのが、1963年フランクフルト・モーターショーで発表された大型高級リムジン600/W100だ。まさに「グロッサー・メルセデスの再来」である。
1963年、最高級車の概念を覆す妥協なき設計思想
600/W100の開発でメルセデス・ベンツが目指したのは、単なる大型リムジンではなかった。乗員には最高の快適性を提供し、ドライバーにはスポーツカーに匹敵する走行性能を与えるという、当時としては極めて贅沢な思想だった。そのスタイリングを指揮したのが、デザイン部門を率いていたフリードリッヒ・ガイガーであり、ポール・ブラックが重要な役割を果たした。

メルセデス・ベンツは1963年フランクフルト・モーターショー(IAA)で大型高級リムジン600/W100を世界初公開した。写真は4ドアのプルマン・リムジン。
特筆すべきは、その角張った堂々たるボディから空気抵抗が大きく見えるにもかかわらず、実際の空力性能は驚くほど優秀でCd値が0.458だったことである。比較として、同時代の230SL/W113「パゴダ」はハードトップ装着時で0.515だから、この大型高級リムジン600の空力性能がいかに優れていたかがわかる。さらに0-100km/h加速は9.7秒、最高速度は205km/h。エンジンは6332ccのM100型V型8気筒SOHC。最高出力250psを発揮し、600の巨体を205km/hまで引っ張った。

この600/W100のエンジンが1968年のスーパーセダン300SEL 6.3/W109に移植されたことは周知のとおり。
しかも、当時の大型リムジンにありがちな旧式な箱型スタイルとは一線を画していた。標準リムジンでも全長5540mm×全幅1950mm×全高1485mm、ホイールベース3200mmという堂々たるサイズでありながら、スタイリングは超モダンであった。生産はジンデルフィンゲン工場で一貫して行われ、熟練した職人の手による特別仕立ての存在であった。
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