発売後1カ月の受注台数が3万台を超え、順調なスタートを切ったホンダ・フィットとトヨタ・ヤリス。エコと実用性を両立するコンパクトというけれど、やっぱり気になるのはドライバビリティだろう。そこで欧州の同クラス車を集め、比較試乗を実施。個性溢れるライバルたちの中でも、国産勢は輝くのか?
軽さとパワートレインがヤリスの躍動感の源
ヤリスのデザインが、これほどまでに渋谷の街並みに映えるとは思わなかった。4代目にして慣れ親しんだヴィッツからグローバルネームへと転換したトヨタのBセグコンパクトは、まずその見た目から躍動感を筆者に伝えてきた。
走り出してもその印象は変わらないどころか、むしろその小気味よさを上乗せして行く。試乗車は1.5L直列3気筒エンジンを搭載する中核グレードの「G」。小排気量ターボやハイブリッドが時代をリードする中にあっても、その軽い車体を文字通りナチュラルに加速させる自然吸気ユニットに不足感はなく、ダイレクトシフトCVTの巧みなトルクキープ力と共に、街中を気持ち良く走り回れるのだ。常に駆動と右足がリンクする空走感のなさ。軽さと適度なパワー、そしてこのCVTとの三位一体感は、ヤリスの躍動感の源となっている。
操舵応答性の高さは、こうした走りに楽しさを付け加える。ステアリング操作と同時に絶妙な前傾姿勢を作り出し、クルマ全体で曲がって行くその見事さ。この鋭い反応はしなやかなサスストロークで民主化されているから、過度なゲインを感じることなく、誰もがその気持ちよさを手に入れられるはずだ。
こうした運動性能を得るためにボディサイズは4m以下に抑えられ、その後席スペースもライバルに劣る。静粛性も大衆小型車の域を出ないヤリスだが、それまでもがベーシックBの魅力になっている。ヤリスの走りは、本能的だ。