北米日産の初代社長・片山豊氏の企画提案を元にS30型フェアレディZが誕生したのが1969年。スタイリッシュで高性能ながら低価格、信頼性と経済性に優れ、大きなラゲッジスペースがユーティリティ面でも有効と、アメリカ人のライフスタイルとニーズに合致し爆発的にヒットした。米国でのラインナップとして当初2400ccだった排気量は2600、2800ccと徐々にアップされ、細かな改良を続けつつ78年までの約10年間でおよそ55万台を生産、主な市場であった北米では「ダッツン・ズィー」「ズィー・カー」の愛称で親しまれることになる。
S30モデル末期のスペシャルエディション
そんなS30系のモデル末期である77年、北米ディーラー向けに、2種類のスペシャル・デコレート・パッケージがリリースされた。そのひとつが、今回制作した280Z ZZZAPエディション(ZAPとも呼ばれる)である。280Zに「ZAP」(気迫、やっつけるの意)という言葉を掛けたネーミングは、なかなかに勇ましい。専用色サンバーストイエローに、黒を基調としたマルチカラーストライプ、レーシングミラー、リアウィンドウ・ルーバー等を特別装備。生産1000台のうち12台が同年F-1ロングビーチGPのペースカーとして供され、また同名のビデオゲームが人気を博すなど、単なるモデル末期のお買い得パッケージの域を超えて、注目を集めたようだ。もちろん現在でも、程度の良いものは高値で流通していたり、サードパーティ製ストライプが販売されたりと、主にZマニアの間ではコレクターズアイテムとしての側面が強くなってきている。
プラ板でルーバーも再現!
ここで紹介している作例はハセガワの左ハンドル仕様(240Z HLS30)をベースに各部を280Z化、更にZZZAPのディテールを盛り込んだ。ZAPエディションは、その存在を知って以来、制作したいと思っていたひとつだった。たまたまこのタイミングで3Dプリンタ出力品のホイールを入手し、制作に目処が立ったのである。前後の無骨な5マイル・バンパー、レーシングミラー、リアウィンドウ・ルーバーなどは、全てプラ板やプラ棒からスクラッチ。デカールはネットで見つけた画像を元にイラストレーターで版下を制作、エーワン製の転写シールにプリントして使用。今回、このデカールの乾燥時間不足のため、クリアーコート後に表面が荒れてしまったのが悔やまれるが、表面に残った糊成分の除去と乾燥を完全に行えば、クリアーコートして通常のデカールに近い仕上げにすることも可能だ。通常の家庭用インクジェットプリンタを使用するため、当然ながら白を印刷できないのと、各色の隠蔽力がかなり弱いため下地が白や黄色いボディに限定されるという制約はあるものの、今回のように条件が揃えば手軽に自作デカールが楽しめる。デカールを自作できれば制作の幅が広がるので、興味のある方は是非ともチャレンジして頂きたい。
5マイルバンパーに陽気なカラーリング!
実は以前、タミヤのフェアレディZ(Z34) Heritage Editionを制作したのだが、そのさい組立説明書の実車解説を読み、そのルーツに280Z ZZZAPという存在があったことを知ったことが今回のきっかけ。ネットでZZZAPを検索すると、ビデオゲームの記事の合間に、実車画像や当時の広告画像を見つけた。現在のセンスとはちょっとズレるが、派手で陽気なカラーとストライプ。5マイル・バンパーやリアウィンドウ・ルーバーなど、洗練されていないが豪華で豊かな北米280Zのディテールにノックアウトされたのであった。