名車「2CV」の精神を受け継ぐコンセプトモデル登場。シトロエンが提案する新たな日常の足
ステランティスは2026年10月11日、パリ・モーターショーにおいて、シトロエンブランドの新たなコンセプトカー「2CVコンセプト」を世界初公開した。かつて世界中で愛された伝説的な名車「2CV」の精神を現代の電気自動車(EV)として再解釈したモデルだ。ヨーロッパで製造され、約1万5000ユーロ(約266万円)という手頃な価格を目指すこの小型EVは、2028年までに市販モデルとしてシトロエンのラインナップに加わる予定だ。
【画像68枚】亀とウサギのペダルから専用18インチまで。シトロエン「2CVコンセプト」のディテールを網羅
ノスタルジーにとどまらない「理念の再発明」。肥大化するEV市場への痛烈なアンチテーゼ
シトロエンのCEOであるグザヴィエ・シャルドンは、以下のように語っている。
「2CVを再発明するというのは、過去のクルマを複製することではありません。そのシンプルさ、親しみやすさ、そして提供した自由という、このクルマをユニークなものにした要素を再発明することなのです。2CVコンセプトによって、私たちはその精神を現代の世界にもたらし、電動モビリティをよりシンプルで、より人間的で、より魅力的なものにします。世界は変わりました。しかし、シトロエンで人生をより美しくするというアイデアは同じままです」
その言葉通り、2CVコンセプトは単なる懐古主義のクルマではない。アミとC3の間に位置づけられるこのモデルは、手頃な価格の電気自動車として、日常の短い移動に新たな喜びをもたらすことを目的としている。クルマが大型化し複雑化する市場のトレンドに逆行し、全長はオリジナルの2CVよりも短い3.76mに設定された。さらに車両重量は1トンを目指して軽量化されており、それによってバッテリーを小型化し、日常使いに最適な航続距離と低いランニングコストを実現する。
曲線美と鮮烈なカラーリングの対話。シトロエンらしさが際立つ独創的なシルエット
シルエットは、オリジナルのプロポーションと曲線を継承しつつも、より張りのあるラインと豊かなボリュームによって再解釈されている。鮮やかなインフラレッドのボディカラーは、オレンジをベースに黄色と赤のハイライトが加えられ、車両にエネルギーを与えている。フロントマスクには、ボディから独立した丸型ヘッドライトや彫りの深いボンネット、垂直に切り立ったフロントガラスが備わる。
足元には、オリジナルからインスピレーションを得た18インチのスチールホイールが装着され、ミシュランとの共同開発による特別なタイヤが組み合わされている。リアセクションは、初代モデルのようにバンパーまで伸びる黒いテールゲートが特徴的であり、ナンバープレートは各国の愛称を表示できるデジタル式に変更されている。
ダッシュボードを廃した潔さ。シンプルさと機能性が生む、光あふれる室内空間
インテリアは、従来のダッシュボードを廃止し、空間を最大限に広げている。ダッシュボードの代わりとなる円柱形のユニットには、1本スポークのステアリングホイール、シフトセレクター、必須情報を運転者の視野に表示するスマートビジョン、そしてコミックの世界観を取り入れた8インチの正方形タッチスクリーンが集約されている。
センターコンソールの代わりに、取り外し可能な収納バスケットが配置され、車外へ持ち出せるポータブルラジオ兼スピーカーの「ラディオエン」も装備されている。シートには黄色を基調としたタータンチェック柄が採用され、ステアリングや操作部にはかつてのベークライトを思わせるベージュが配されている。また、手動の巻き上げ式ファブリックサンルーフを開けば、車内に自然光があふれる開放的な空間が広がる。
亀とウサギのペダルから「48/90/26」の暗号まで。遊び心と最新鋭デジタルツイン技術の共存
車体の随所には、シトロエンらしい遊び心と2CVの歴史へのオマージュが散りばめられている。ホーンとモーターの起動音はオリジナルの音色を響かせ、ブレーキペダルには亀、アクセルペダルにはウサギのマークが刻まれている。ドアの収納スペースは、元々の仕様書にあった卵を運ぶための要件に敬意を表して設計された。さらに、フロントガラスに記された「48/90/26」という数字は、1948年の初代発表、1990年の生産終了、そして2026年のコンセプトカー発表という歴史を物語っている。
一方で、ミシュランと共同開発したタイヤのユニバーサルデジタルツイン技術により、センサーなしで車両データからタイヤの状態をリアルタイムで監視するなど、最新技術も抜かりなく搭載されている。2CVコンセプトは、過去を蘇らせるのではなく、明日のモビリティの課題に向き合うために、自由と楽しさを再発明した新たな象徴である。
【ル・ボラン編集部より】
シトロエンが描く未来は、常に過去の哲学との対話から生まれる。昨今のEVは、航続距離や高度な電子制御と引き換えに肥大化の一途を辿ってきた。しかし、この「2CVコンセプト」は1トン未満という軽量化と3.76mの短い全長により、現代のクルマが失いかけた「軽快な日常の足」という本質を見事に突いている。かつての2CVが大衆に移動の自由をもたらしたように、最新技術を内包しつつも人間中心の親しみやすさを提示する姿勢は、ブランドの歴史的系譜を正統に受け継ぐものである。
【画像68枚】亀とウサギのペダルから専用18インチまで。シトロエン「2CVコンセプト」のディテールを網羅







































































