ダイナミックに表情を変える山々の姿に息を呑む。
百年以上の時を経てもなお、明治21年(1888年)の噴火による崩壊の傷跡を見せる磐梯山。この山を遠巻きに望みながら、山形と福島の県境にまたがる吾妻連峰の東端を抜けていく磐梯吾妻スカイライン。
かつての磐梯山はその急峻な頂の特徴から、天に掛かる岩の梯子を意味する〝いわはしやま〟とも呼ばれていた。
一方、山岳ルートを形成する吾妻連峰の吾妻小富士やスカイラインを隔てて相対する東吾妻山の名前に見つけられる〝吾妻〟という呼び方は日本武尊の伝説として伝えられている。日本武尊が東征の際に、海の神の怒りを静めるために身を投じた妻への恋しさを込めて「あづまはや(わが妻よ)」と嘆いたことに由来するとされている。この伝説はおもに東日本各地に残されており、福島の当地のほかに群馬県吾妻郡の嬬恋や上信国境の碓氷峠など、山並みから見下ろす平野が雲海に隠されるような場所である。
この地理的な条件の一致は、すなわち絶景のある場所だといえる。何度も何度も急なカーブを曲がっては少しずつ空に近づき、やがて視界が大きく開けると、そこには写真で見るよりも広大で想像しているよりも荒々しい風景が広がっている。その景色は、かつては神の領域の場所であったのかも知れない。そう思うとき、このスカイラインから眺める木々も山々も、遙かなる町並みもよりいっそう輝くだろう。