独特なデフォルメを施した、温かみのあるディテールが特徴
今回は、フランス・キラル製メルセデス ベンツ300SL(クーペ)のご紹介をします。
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実車は、1954年のニューヨーク国際オートショーで発表され、当時の市販車としては最速のスポーツカーでした。機械式燃料噴射装置およびガソリン直噴エンジンは市販車では初採用で、当時の300リムジンの直列6気筒SOHC、3000ccのエンジンを125HPから倍近い215HP/5,800rpm、28mkg/4,600rpmにチューニングし、最高時速は260 km/hに達しました。
ボディは側面を通るスペースフレームの影響にて、非常に浅いドアしか装着出来ない関係上、ガルウィング・ドアを採用しました。300SLは、生産終了の1957年5月までに1,400台生産されました。
一方、キラル ブランドのミニカーは、私の知る限り、1957年から1959年までの極短期間に、金型で13種、バリエーションを含むミニカーは約20種類のみ少数生産したブランドでした。
作りは、1950年代の標準的なもので、ダイキャスト製の一体成型ボディに、ウィンドウとシート、スプリングサスペンションも無いなど、とても簡素で、後期の一部モデルには、透明プラスチックのウィンドウが装着されました。
また、同ブランドの特徴なのが、独特なデフォルメを施した、まるで、漫画に登場するような、温かみのあるほのぼのとしたディテールです。ボックスアートもフランスらしいイラストが描かれていました。今回ご紹介する300SLは1957年から製造されたようで、300SL以外のミニカーは1958~1959年に製造されたようですので、キラルの最初のミニカーだった可能性があります。
300SL以外は、バンパー、ヘッドライト、ラジエターグリルは殆どシルバーの吹き付けですが、300SLは筆塗となっています。
今回ご紹介しているボディカラーが単色のものと、ルーフの色を変えた2トーンカラーのボディーカラーが存在しました。この300SLは、ややワイドボディながら、300SLの特徴を良く再現しています。前後バンパーにオーバーライダーが再現されているので、実車の対米輸出モデルをモチーフにしたようです。
近年一時期、当時の各車種の金型を使用した復刻版が販売されました。復刻版には、透明プラスチックのウィンドウが装着され、ボディーカラーは、オリジナルより厚く艶やかな塗料でペイントされ、ヘッドライト、バンパー、ラジエターグリルもシルバーの筆塗りで再現、シャシーは未塗装のブリキの地肌のままでした。同じ金型ながら、塗料の違いで随分雰囲気が異なるものだと感じました。
今回ご紹介した個体は、半世紀以上生き永らえて来た証として、ボディの塗装の剥げ、シャシーの錆、アルミ製ホイールの酸化が見られますが、その部分も大変気に入って大切にコレクションしています。
この記事を書いた人
モデル・カーズ 「丸餅博士のヴィンテージ・ミニカー天国」並びにRM MODELS 「TRAM&CARS」に執筆中。愛車は1987年から所有している丸餅(’71 FIAT500L改)と1999年から使用している’91 メルセデス・ベンツ300E-24 (W124-031)。ヌォーヴァ・チンクエチェントと50年以上コレクションし続けているミニカーの啓蒙と伝道が使命。