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【世界初公開】フェラーリ新型EV「ルーチェ」降臨。1050ps・4モーターが「エンジン車超え」の走りを作る理由

フェラーリ・ルーチェ
フェラーリ・ルーチェ
フェラーリ・ルーチェ
フェラーリ・ルーチェ
フェラーリ・ルーチェ

内燃機関を持たない「跳ね馬」がついにローマでベールを脱いだ

2026年2月、「光」を意味する車名と、ジョニー・アイブ率いるLoveFromが手がけた革新的な物理スイッチの採用が先行発表され、世界中を驚かせたフェラーリ初のEV「ルーチェ」。それから3カ月。ついにその完全な姿がベールを脱いだ。1050psを誇る4モーターの巨体が、いかにしてプロサングエを凌ぐ軽快な走りを実現したのか。モータージャーナリスト・大谷達也氏が跳ね馬の新時代を紐解く。

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フェラーリの新章。EV化は「目的」ではなく「手段」

フェラーリ初のEV“ルーチェ”が現地時間の5月25日夜遅くにイタリア・ローマで発表された。フェラーリはルーチェを「マラネッロの新章の幕開け」と位置付けている。つまり、ここからフェラーリの新時代が始まるというのだ。

自動車メーカーとしての創業から79年間、内燃エンジンを積んだスポーツカーのみを作り続けてきたフェラーリにとって、「内燃エンジンを積まない」初のスポーツカーを世に送り出すことは、間違いなく「新章の幕開け」と呼ぶに相応しい事件だ。しかし、だからといって「フェラーリがEV化に向けて全面的に舵を切る」と捉えるのは早計である。

昨年10月にマラネッロで行われた機関投資家向けのキャピタル・マーケッツデイにおいて、フェラーリは「2030年段階のEV比率を20%とする」ことを発表した。これは従来の目標だった40%を下回るものであり、自動車産業界の現状を正しく反映したものといえる。

では、ルーチェにはどのような役割が期待されているのか?

今回発表されたプレスキットに、次のような一文があった。「技術に善悪はないという技術中立性の原則に基づき、電動化は既存エンジンを置き換えるものではなく、製品アーキテクチャー、性能、デザイン、そしてドライビング・エクスペリエンスに関する設計能力を拡大するためにフェラーリが利用する手段のひとつ」

これこそ、フェラーリにおけるルーチェの位置づけを正しく表しているように思う。つまり、電動化そのものが目的ではなく、電動化でしか実現できない価値をフェラーリ流に実現することこそが、ルーチェの開発目標だったわけだ。

4モーターと独立制御がもたらす、プロサングエ超えの俊敏性

そのことを端的に表現しているのが4モーターを駆使した駆動方式だ。

ご存知のとおり、従来のEVにも4輪駆動はあったが、それらは、ごく一部の例外を除いて、前後アクスルの左右輪をひとつのモーターで駆動する2モーター方式だった。この場合、左右輪の駆動力を積極的に制御しようと思っても限界があり、トルクベクタリングは減速側でのみ動作するブレーキトルクベクタリングに頼る以外になかった。つまり、クルマを積極的に曲げようとすれば、車速を低下させる恐れがあったのだ。

しかし、ルーチェに採用された4モーター方式であれば、4輪の駆動力を独立して制御できるので、駆動力によりヨーモーメントを積極的にコントロールすることが可能となる。極端な話、ドライバーがステアリングを切らずともクルマが曲がろうとするチカラを生み出せるのだ。

フェラーリはこの4モーター方式を採用することで、一般的に車重が重くなりがちなEVにエンジン車並みの軽快なハンドリングをもたらそうとしたのだ。

軽快なハンドリングの追求は、これだけに留まらない。

プロサングエ、F80に続いてアクティブサスペンションを採用。4輪の位置を電気アクチュエーターで積極的に制御することで理想的な姿勢を作り出し、フェラーリの名に相応しいハンドリングを生み出そうとしたのだ。さらに、後輪は左右個別で操舵角を制御できる「独立式4WS」を採用。これにブレーキトルクベクタリング、ABS evoなどを組み合わせるとともにそれらを統合制御することで、これまでの内燃エンジン車では望めなかった軽快なハンドリングを実現しようとしたのだ。

実質400kg減と同等の運動性能と、新たな「フェラーリ・ミュージック」

また、フェラーリはお得意の軽量設計を駆使することで、122kWhの大容量バッテリーを搭載しながら車重を2260kgに留めることにも成功。さらに、EVならではの低重心設計、そしてマスの集中化を徹底させることで、実際の車重より400kg軽いクルマと実質的に同等の運動性能を実現させたという。

これは驚くべきことだ。なぜなら、プロサングエはルーチェよりもおよそ200kg軽いが、この400kg分を差し引けば、プロサングエよりもルーチェのほうが200kg分もハンドリングは軽快ということになる。しかも、ルーチェにはプロサングエにない4輪独立の駆動力制御が搭載されているのだから、ルーチェのほうが圧倒的に俊敏さは上とも考えられるのだ。

ちなみにパワーウェイトレシオの点でもルーチェは2.16kg/psで、プロサングエの2.80kg/psを凌いでいる。スペックを比べる限り、ルーチェの優位性は揺るがない。

また、EVのルーチェには、フェラーリ・ミュージックと称されてきたエンジンサウンドを生み出すことはできないが、その代わりにモーターが生み出す繊細なサウンドをセンサーで拾い上げ、ここに電子的なフィルタリングやイコライジングを施すことで、エンジンに優るとも劣らない美しい音色を奏でることに成功したとされる。

元アップルのデザイナー、ジョニー・アイブが描いた機能美とアナログの融合

ルーチェのデザインを手がけたのが、アップルで最高デザイン責任者を務めたジョニー・アイブ率いるLoveFromだったことは周知のとおり。グラスエリアを大きくとるとともに、優雅な曲線で包み込まれたシンプルな造形は、初代iMacや初代iPhoneを生み出してきたアイブならではの作風といえる。

そしてインテリアは、iPadなどを思わせるデザインを随所に散りばめるいっぽうで、アナログの機械式計器や物理スイッチを必要に応じて活用することで、機能美と操作性を高次元で両立させたように思える。

フェラーリの伝統と最先端の電動技術を融合させて生まれたルーチェ。その走りを、1日も早く試してみたいものである。

【Specification】FERRARI LUCE
 フェラーリ・ルーチェ

■全長×全幅×全高=5026×1999×1544mm
■ホイールベース=2961mm
■車両重量=2260kg
■駆動方式=全輪駆動
■最高出力=772kW(1050ps)
■最大トルク=990Nm(101.0kg-m)
■バッテリー容量=122kWh
■一充電走行距離(WLTPモード)=530km
■ブレーキ=前:カーボンセラミックブレーキ390×34mm、後:カーボンセラミックブレーキ372×34mm
■タイヤ=前:265/35R23 J9.5、後:315/30 R24 J11
■0-100km/h加速=2.5秒
■0-200km/h加速=6.8秒
■最高速度=310km/h

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大谷達也

AUTHOR

大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員へと転身。同誌副編集長に就任した後、2010年に退職し、フリーランスの自動車ライターとなる。現在はラグジュアリーカーを中心に軽自動車まで幅広く取材。先端技術やモータースポーツ関連の原稿執筆も数多く手がける。2024-2025 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考員、日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本モータースポーツ記者会会員。

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