サーキット試乗

【BMW新型iX3試乗】469ps/2.3t超のBEVに「駆けぬける歓び」は健在か? “カムに乗る”官能性すら抱く理想形《LE VOLANT LAB》

BMW iX3
1961年にデビューしたBMW 1500

伝統の存続と再生を賭けた、次世代BEV

BMWが次世代の指針として掲げる「ノイエ・クラッセ」。その第1弾となる新型「iX3」にいち早くクローズドコースで試乗した。最高出力469ps、最大トルク645Nmを誇り、車重は2360kgに達する堂々たるBEVのSUV。これほどの重量級EVにおいて、BMWの神髄である「駆けぬける歓び」は果たして健在なのだろうか。内燃機関の制約から解き放たれた先にある、驚くべきドライビングフィールを紐解いていく。

【画像52枚】縦スポークのステアリングやパノラミックビジョンも。BMW新型iX3の先進的なコクピットと、オマージュ元「1500」の姿を見比べる

半世紀以上の時を経て蘇る、伝統の再生を賭けた象徴「ノイエ・クラッセ」

まだ認証取得前のためクローズドコースでの試乗となったが、新型iX3に乗る機会を得た。BMWが「ノイエ・クラッセ」第1弾として送り出したBEVのSUVである。

「ノイエ・クラッセ」と聞いて、往年のBMWファンなら特別な響きを感じるだろう。1960年代、BMWが倒産の危機に直面していた時代に、「ノイエ・クラッセ(新しいクラス)」であるミドルクラス市場を切り拓くべく投入されたのがBMW 1500だった。伝統の存続と再生を賭けて生み出され、その使命を見事に果たしたモデルである。さらに、「駆けぬける歓び」というBMWの思想を体現した最初の存在ともいえる。

1961年にデビューしたBMW 1500

1961年にデビューしたBMW 1500

それから半世紀以上の時を経て、歴史的なキャッチコピーが再び掲げられたとなれば、力の入りようは察して余りある。「ノイエ・クラッセ!」と大上段に唱えられたからには、こちらも「乗せてもらいまっせ!」と気合を入れざるを得ない。

クロームを廃止した新デザインのロゴと、元祖「1500」をオマージュした革新のフロントフェイス

その第1弾となるiX3は、まさにオールニュー。なにしろBMWのロゴまで新デザイン!とのことだったが、お判りいただけるだろうか。間違い探しのような差異ではあるが、青と白を十字に仕切る輝くクロームがなくなっている。BMWのロゴはバイエルン州旗に由来し、青と白はバイエルンの空と雲、それを十字に仕切る輝くクロームは航空機のプロペラを表し、バイエルン航空機工業を前身とする歴史を象徴するものとして親しまれてきた。欧州および北米で進められてきた六価クロムをはじめとする環境負荷物質の低減・使用禁止の法規制に対応するためだろうか。

フロントフェイスには元祖ノイエ・クラッセ「1500」をオマージュしたグリルが備わるが、その縁取りもまたクロームではなくイルミネーションに取って代わられた。環境負荷軽減の姿勢はクロムメッキに限らず、新デザインのシートにはサステナブルな素材を採用するなど車両の30%は再生可能素材で構成されているという。

メーターパネルを排した「パノラミックビジョン」と、縦スポークがもたらす新次元のコクピット

新しさで目を惹くのは縦スポークのステアリングホイールだ。従来は縦スポークだとステアリングホイール越しにメーターパネルが見えないという制約があったわけだが、ダッシュボード上を左右いっぱいに横たわる「パノラミックビジョン」がメーターパネルに取って代わったことでデザインの自由度が上がった。このパノラミックビジョンに何を表示するかは、運転席側にひしゃげた平行四辺形のセンターディスプレイ上のフリックで選択可能だ。

走行中、縦スポークゆえのネガは感じなかったが、方向転換しようと切り返してから真っ直ぐに停止したつもりが、90度回し足りていなくて「あれ?」ということがあった。どうやらハンドルをぐるぐるしながら見るでもなくスポークが水平位置になった時を真っ直ぐと認識するクセがついているらしい。きっと所有して慣れてしまえば問題ないのだろうが、もしオーソドックスなタイプがよければオプションの「M」ステアリングホイールを選ぶこともできる。

新設計プラットフォームと、走りのダイナミクスを統べる頭脳「ハート・オブ・ジョイ」

これら内外装のデザインはもちろん、プラットフォームは第6世代BMW eDrive(Gen6)と名付けられた新設計のもの。円柱形バッテリーを直接敷き詰めるパックをアンダーボディとして組み込んだEV専用の「パック・トゥ・オープン・ボディ」方式を採る。後輪用と前輪用のモーターを備え、後輪用は巻き線界磁式同期モーター、前輪用モーターは補助駆動ユニットとして理想的な誘導モーターを採用。主な駆動は後輪が担い、追加のトラクションが必要な時に前輪がサポートを担う。

ドライビングダイナミクス、自動運転、インフォテインメント、ベーシック&コンフォートをそれぞれ制御する4つの「スーパーブレイン」と呼ばれるコンピュータユニットを装備し、中でもドライビングダイナミクスのユニットは「ハート・オブ・ジョイ」と名付けられている。

469ps2.3t超のスペックが魅せる、単なる「ドッカン加速」では終わらない官能の領域

最大トルクは645Nm、最高出力は469ps、0-100km/hは4.9秒というスペックから想像するのはいかにも電気ならではのドッカンスタートだが、そうじゃないのがBMWの矜持。

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フォト=柳田由人/Y. Yanagida、BMW AG

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