コラム

「EVは静かすぎてつまらない」――最新モデルが“面倒なMT”を真似る、技術革新の奇妙な先祖返り【渡辺慎太郎のツベコベイワセテ その7】《LE VOLANT LAB》

ホンダ・スーパーワンのメーター

「面倒くさい」がクルマを進化させ、そして「先祖返り」を引き起こす?

人間は、基本的に面倒なことが嫌いな生き物である。でもそのおかげで、さまざまな技術の進歩があったのも事実である。階段の上り下りが面倒だからエスカレーターやエレベーターが生まれ、汚れ物は洗濯機が洗ってくれて、電球は当分交換不要なLEDになり、携帯電話はいまやパソコンより高いスマートフォンになった。

初代トヨタ・セリカ 1600LTのシフトノブ

同様の進歩はクルマの中でも起きてきた。クルクル回すのが面倒だったウインドウの開閉はパワーウインドウになり、クーラーはエアコンになり、重かったステアリングはパワステになって、ヘッドライトは暗くなれば自動的に点灯するようになった。そして、速度が上がってくると何度もクラッチペダルを踏み、何度もシフトレバーを動かし、坂道ではエンストしたりするとてもやっかいなマニュアル・トランスミッション(MT)は、すべておまかせでシフトショックもほとんど感じられないオートマチック・トランスミッション(AT)になった。

便利さを手に入れると「つまらない」と言い出す、人間のワガママさ

もちろん、世の中にはあえて面倒を好む人もいたりする。サブスク全盛の時代でもレコードやカセットテープがそこそこ売れていたり、豆を挽いてハンドドリップでコーヒーを淹れたりする人がいるように、クルマでもMTは(絶対数は少ないとはいえ)根強い人気がある。

最新型アルファ・ロメオ トナーレのシフトパドル

最新型アルファ・ロメオ トナーレのシフトパドル

人間は、基本的にワガママな生き物でもある。あれほど面倒だからイヤだと言っていたはずなのに、ATに乗ると今度は「つまらない」と言い出し、ステアリング・パドルをつけてマニュアルで変速できるATが誕生する。しかし、最初のうちは面白がってカチャカチャいじっていたものの、しばらくすると結局Dに入れっぱなしで使わなくなったりもする。

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AUTHOR

1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後(株)立風書房に入社、ル・ボラン編集部に配属となる。後に転職してカーグラフィック編集記者、カーグラフィック編集長などを歴任。現在はフリーランスの自動車ジャーナリストとして活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。英国「The Guild of Motoring Writers」会員。

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