モーターショー

突撃リポート【インドネシア国際オートショー】に見たインドネシアのバス事情

新型ダブルデッカーが登場

2018年8月2日(木)~12日(日)に開催された「ガイキンド・インドネシア・インターナショナル・オートショー」にて、今年創立40周年を迎える老舗「カロセリ」のLAKSANA(ラクサナ)から2階建てバスがデビューした。このスカニア製シャシーを使った新型モデルは、日本で数を増やしつつあるスカニア・バンホール製ダブルデッカーの兄弟とも言えるかもしれない。

ところで、聞き慣れない「カロセリ(KAROSERI)」とは、イタリア語でCARROZZERIA(カロッツェリア)、オランダ語/フランス語でCARROSSERIE(カロセリエ)、いわゆるコーチビルダーのことです。ここインドネシアでカロセリ創生期にあった会社が「SUPERIOR CARROSSERIE」という名前であったことと、このスペルの雰囲気から、カロセリはオランダ語からきたものと推測できます。自動車関係の用語にはオランダ語源のものがいくつかあります。

そんなコーチビルダーが大中小合わせて100社以上はあると言われるインドネシアはカロセリ天国です。その歴史は、ピックアップトラックに多種多彩なボディを載せて乗用車にしたところから始まりました。乗用車が高くて簡単に買えなかった時代(今でも充分高いですけど)、また家族も多いこの国では、「キジャン」「ダットサントラック」「シボレーLUV」「コルト(L300デリカ)」「ハイエース」といったピックアップトラックのシャシーにオリジナルのボディを架装して7~10人乗りに仕立てていました。バスも、トラックシャシーをベースに仕立てたものが多かった。

その当時のクルマは、一点一点現物合わせで鉄板をトンカチしてパテで埋めたり盛ったりしていたので同じクルマが2台とないオリジナル。吊しで販売されるクルマの中から好みで選んだり、自分仕様にオーダーメイドしたりしていました。

時は流れ、今ではトンカチパテ埋めタイプはほぼ各都市のミニトランスポーターの「Angkot(Angkutan Kota=都市内乗合自動車)」だけになってしまいました。ラクサナ社のダブルデッカーは、各所にアルミニウムやプラスチック複合材を使用するなどの軽量化を図った初めてのバスではないでしょうか。低重心化のために屋根にも使用しています。以前、三菱ふそうの「エアロキング」開発者にインタビューした際に、2階部分の軽量化には相当苦労したと聞いたことがあります。

今回のショーで発表された仕様は、メインの1階部分もシートでびっしりですが、どこへ行くにもうんざりする渋滞が避けられないこの国では、メインフロアを工夫して乗客を飽きさせない旅が大切かもしれません。

デザインもインターナショナルな感じなので、このままどこへ出しても通用しそうです。発表会を一緒に見ていた工業デザイン系ジャーナリストの古庄速人さんによると、「ボディのデザインキーを意識したこのプロジェクションなんかを見ていると、内部に相当デザインがわかっている人間がいると思う」とのこと。また、「デモビデオにもかなり最新の設備が見えるので、かなり進んだ会社ではないか」と、仰っていました。

ちなみにラクサナは、ジャカルタ市内を走る「TransJakarta(トランスジャカルタ)」のメルセデス・ベンツやスカニアのシャシーを使った最新型バスも一手に納入しており、「フィジー」「東ティモール」「バングラデシュ」にも輸出している実力者なのです。

これはジャカルタ市内で運行している連節バス。シャシーはスカニア製を使用しています。

インドネシアのバスは多彩

さて、そんなインドネシアのバス事情ですが、ほかのカロセリはどんなバスを作っているのでしょうか。写真でご紹介します。

まずはインドネシアで老舗中の老舗、adi putro社のJETBUS3+ウルトラハイデッカー。ここまでしてなぜダブルデッカーにしないのでしょう? 贅沢なつくりです。

同じく、adi putro社製の中型バス。ベースは三菱キャンターとのこと。

新興カロセリのテントレム製スーパーハイデッカー。シャシーは人気のメルセデス・ベンツ。

日野のブースに展示されていたハイデッカーバスだがカロセリはテントレム。とうとうインドネシアのバスもオートマチック時代になりました。

現地でも人気の「いすゞ」は純正仕様のエルフ中型バスを展示していました。

これはいすゞブースに展示されていたエルフのスクールバスですが、カロセリは現地のテントレムとなります。

と、なかなかバリエーション豊富なインドネシアのバスではありませんか?

シャシーとカロセリの組み合わせだけでなく、インテリアもオーダーできるので、あなた好みのオリジナル仕様でバスが製作できます。シングルデッカーの場合でカロセリ代がざっと600万円から700万円なので、オーダーメイドとしてはそんなに高くないのでは? シングルデッカーの大型で全長13m超、ダブルデッカーだと全高も4mを超えるヨーロッパサイズなので、そのままで日本の道を走ることは難しいですが、短めのシャシーもあるので、日本の法規に適合させたバスを作るのはそう難しいことではないと思います。

あ、ここまでの写真を見て、デザインが似てるなと思った方もいらっしゃるかもしれません。それには理由があるのですが、それはまた別の機会に!

フォト:大田中秀一 S.Otanaka

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