マクラーレン

【国内試乗】技術屋集団マクラーレンの面目躍如! 完全新設計のアルトゥーラはマクラーレンの新時代を導く洗練された1台だった

マクラーレン・オートモーティブが次のステップへ向かうことを示唆するアルトゥーラを、ようやく国内のオープンロードで走らせる時がやって来た。パワートレインはもちろん、基本骨格となるカーボンモノコックも完全新設計。その走りは、我々を一体どんな世界へ導いてくれるのか。

【写真9枚】電動化されてもマクラーレンはマクラーレン! アルトゥーラの詳細を写真で見る

新世代マクラーレンの狼煙

音もなく動き出す、というのはちょっと言い過ぎで、正確にはエンジン音はせず、モーターの「ヒュイーン」という音をかすかに漏らしながらアルトゥーラは走り出した。このクルマ、エンジン始動直後のドライブモードは「Eモード」がデフォルトになっている。だからドライバーが意図的にドライブモードスイッチをいじらない限り、常に最初はヒュイーンと走り出すのである。

マクラーレンに乗るといつも感心するのはその乗り心地のよさで、アルトゥーラでもそれは変わりなかった。スーパースポーツとは思えない、ちょっと拍子抜けするくらい快適なのである。いっぽうで、これまでと違うと感じたのは、ステアリングを切ったときのクルマの動きだ。重いパワートレインを車両の中心近くに置く、ヨー慣性モーメントに有利なミッドシップパッケージの優位性を余すことなく利用した回頭性のよさもマクラーレン全車に共通する特徴のひとつだが、アルトゥーラの曲がり方はこれまでとちょっと異なる。ステアリングを切ってフロントが向きを変え始めると、リアからそっと押されるような感触があるのだ。マクラーレンでは初採用となるEデフの仕業だ。低速域でも感じるこの感触は、しかしその介入がとても自然なのでおせっかいではない。よく曲がるマクラーレンがさらによく曲がるようになった。そんな印象である。

ワインディグロードでの操縦性は見事というほかに言葉が見つからない。いたずらにゲインを上げていないので、ナーバスな動きはまったくせず、ドライバーの入力に極めて従順だ。けっこうなペースで右に左にステアリングを切るような場面でも、このクルマは不思議なことに、ゆっくり切ってもちゃんと間に合うのである。レーシングドライバーはたいていステアリングをゆっくり切るが、自分もそのスキルを持ち合わせているような錯覚に陥るほどである。電動パワステ全盛の時代に油圧式にこだわったのは、この極上のステアリングフィールを実現したかったのだろう。必要なロードインフォメーションが手に取るように分かるし、手応えも最適化されている。ステアリングを切っている間は終始、楽しくて仕方なかった。車検証によると前軸重のほうが250kgも軽いのに、まるでトラクションがかかっている4WDの前輪のように接地性が高いことにも驚いた。どうしたらこんな接地感が出せるのだろう。謎である。

エンジンは新開発の3L V6ツインターボで、120度という広いバンク角を持つ。重心を下げ、バンク内にターボを配置してエキゾーストマニフォールドの全長を短くしコンパクトに収めるためだろう。コンパクト化にはトランスミッションもひと役買っている。ギアボックスはこれまでのよりも1速増えて8速になったにもかかわらず、リバースギアを省くこと(後退はモーター駆動)で全長を40mmも短縮したという。そしてギアボックスのベルハウジング内に95ps/220Nmを発生するモーターが組み込まれている。

パワーアップのために大径のターボを使用しているが、レスポンスの悪化はモーターが補うので、結果的にアクセルペダルの動きに対して瞬速の反応を示す。そして特に5000rpmから上のエンジンサウンドは素晴らしく、その音を聞きたいがために右足を踏み込んでしまいたくなるほどだった。パワーデリバリーに荒々しさがない点にも好感が持てた。GT的要素をあえて持たせているセッティングだと解釈した。

電動化されても、マクラーレンのクルマ作りはまったくブレていなかった。それどころか、さらに進化してもっと洗練されていた。末恐ろしい技術力である。

【Specification】マクラーレン・アルトゥーラ
■全長×全幅×全高=4539×1913×1193mm
■ホイールベース=2080mm
■トレッド=1650/1613mm
■車両重量=1395kg
■エンジン種類/排気量=V6DOHC24V+ツインターボ/2993cc
■最高出力=585ps(430kW)/7500rpm
■最大トルク=585Nm(59.6kg-m)/2250-7000rpm
■モーター最高出力=680ps(430kW)/7500
■モーター最大トルク=720ps(73.4kg-m)/2250
■燃料タンク容量=66L(プレミアム)
■トランスミッション=8速DCT
■サスペンション(F:R)=Wウィッシュボーン:コイル
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=235/35R19(8.5J):295/35R20(10.5J)
■車両本体価格(税込)=29,650,000円

マクラーレン・アルトゥーラ公式サイト

フォト=郡 大二郎/D.Kori ルボラン2022年12月号より転載

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